爆サイの開示請求はなぜ難しい?5つの壁と今すぐやるべき対策

爆サイ

「爆サイに自分のことを書かれた。誰が書いたのか突き止めたい」—そう思って調べ始めると、必ず目に入るのが「開示請求は難しい」という言葉ではないでしょうか。

先に結論をお伝えします。開示請求が難しいと言われる理由の大半は、「爆サイというサイト固有の問題」ではなく、「開示請求という制度そのものの構造」にあります。 そして、その壁のいくつかは、あなたが最初の数日でどう動くかによって高さが大きく変わるのです。

この記事では、開示請求の何が難しいのか、そして今日から何ができるのかを整理します。個人の方も、店舗や会社として被害に遭われている方も、共通して読める内容にしました。

そもそも開示請求は「二段階」の手続き

まず前提として、匿名の投稿者を特定する流れを押さえておきましょう。

  1. 爆サイ(サイト運営者)に対して、投稿時のIPアドレスやタイムスタンプの開示を求める
  2. 開示されたIPアドレスをもとに、契約先のアクセスプロバイダ(携帯キャリアや光回線事業者)に対して、契約者の氏名・住所の開示を求める

IPアドレスだけでは、どこの誰かはわかりません。爆サイは投稿者の住所や氏名、メールアドレスといった情報を保有していないため、開示されたIPアドレスをもとに、改めてアクセスプロバイダへ請求する必要があります。この「2つの関門」を順にクリアしなければならない点が、手続きを重く感じさせる最初の要因です。

「難しい」と言われる5つの壁

壁①:ログの保存期間が短い(3〜6か月)

最も現実的で、最も残酷な壁がこれです。

ログの保存期間は一般的に3か月から6か月程度とされており、書き込みから時間が経ちすぎている場合には、すでにログが残っておらず開示を受けられない可能性が高くなります。携帯キャリアは約3か月、光回線などは約3〜6か月が目安とされ、この期間を過ぎると投稿者の特定は難しくなります。

つまり、「様子を見よう」と悩んでいる時間そのものが、選択肢を削っていきます。難易度を上げている犯人は、法律ではなく時間である、と言い換えてもいいかもしれません。

壁②:「不快な投稿」と「権利侵害の投稿」は違う

ここが、最もつまずきやすいポイントです。

開示請求では権利侵害の明白性を立証しなければならず、投稿内容に権利侵害が認められないときは、裁判所は開示請求を認めません。「腹が立つ」「許せない」という感覚と、法的な評価は別物として扱われます。

とりわけ重要なのが、事実の摘示か、意見・感想かという区別です。名誉毀損は大きく①事実摘示型と②意見論評型に分けられ、事実摘示型のほうが投稿内容の反真実性を立証しやすく、開示請求が認められやすい傾向にあります。「〇〇は前科がある」は事実の摘示ですが、「最低」「不快」といった評価だけの投稿は、そもそも社会的評価の低下と評価されにくい、という整理になります。

壁③:「嘘であること」を、書かれた側が証明する

通常の名誉毀損の裁判では、書いた側が「真実だ」と証明する責任を負います。ところが開示請求では、この責任が逆転します。

発信者情報開示請求訴訟においては、本来は表現者側が負うべき違法性阻却事由があることの立証責任が、開示請求者側に転換されています。そのため請求する側は、投稿内容が虚偽であることを具体的に主張・立証する必要があり、反論資料や客観的な証拠をそろえられるかが分かれ目になります。

「書かれた側が、書かれていないことを証明する」——直感に反しますが、これが開示請求の設計です。

壁④:誰のことか分からない書き込みは対象になりにくい

投稿が誰について言及しているのか特定できない場合(これを「同定可能性」といいます)、特定の対象者の社会的評価が低下したとはいえず、名誉毀損には当たらないと判断されます。イニシャルやハンドルネーム、役職名だけの書き込みは、ここで引っかかりやすくなります。

もっとも、爆サイは地域密着型の掲示板であるという特性があります。たとえば店名や源氏名が匿名で書かれていても、地域が絞られていることで誰のことか容易に分かってしまうケースもあります。前後の文脈やスレッドの流れとセットで見れば特定できる、と評価される余地は十分にあります。

壁⑤:手続きの入口が、そもそも分かりにくい

爆サイに何をどう送ればいいのか、次にどのプロバイダへ請求するのか、裁判所への申立てはどう書くのか——。二段階の手続きを、期限に追われながら自力で組み立てるのは負担が大きく、これが「難しい」という体感の正体になっていることも少なくありません。

個人か法人かで、使える主張が変わる

見落とされがちですが、ここは押さえておく価値があります。

爆サイのトラブルでは、主に①名誉権の侵害、②プライバシー権の侵害、③名誉感情の侵害が問題になります。このうち③が、個人と法人で扱いが分かれます。

個人の場合、具体的な事実が書かれていなくても、侮辱的な人格攻撃について「名誉感情の侵害」を主張できる余地があります。実際、具体的な事実を示さず「ペテン師」等と記載した事例で、名誉権の侵害は認めなかったものの、名誉感情の侵害を理由に開示請求を認めた裁判例もあります。壁②で行き止まりに見えても、別ルートが残っている可能性があるということです。

法人の場合は違います。法人には感情がないため精神的苦痛は発生しないと考えられており、感情を軸にした訴えができません。社会的評価が下がったことによる損害を示せるかが鍵になります。

店舗や会社として動く場合、使える武器が一つ少ない。逆に個人であれば、諦めるのが早すぎるかもしれない。同じ「爆サイの開示請求」でも、立場によって戦い方が変わります。

「爆サイだから特別に難しい」とは限らない

ここまで壁ばかり書きましたが、爆サイに固有の事情としては、むしろ進めやすい面も指摘されています。

爆サイには弁護士・法務関連の申告窓口が用意されており、権利侵害性が認められる投稿については、この窓口を通じてIPアドレスやタイムスタンプ等の情報が開示されることがあります。弁護士からの要請であれば、裁判所の手続を使わなくても比較的柔軟にIPアドレスを開示する傾向があり、これは他のサイトにはあまりない爆サイの特徴だと指摘されています。

制度面でも変化がありました。2022年10月施行の改正法により、従来2回必要だった裁判手続きを1回の非訟手続(発信者情報開示命令)で進められるようになり、費用や時間の負担軽減につながっています。

つまり「爆サイの開示請求は他サイトより通りにくい」という理解は、必ずしも正確ではありません。難しさの本体は、あくまで壁①〜⑤にあります。

【重要な変化】2025年~爆サイが「大規模プラットフォーム」指定

多くの記事がまだ触れていない、しかし実務的に大きい変化があります。

2025年4月1日、プロバイダ責任制限法を改正した「情報流通プラットフォーム対処法」が施行されました。大規模プラットフォーム事業者に対して、一定期間内の削除申出への対応や、削除基準の策定・公表を義務付ける規制が新たに設けられています。

そして総務省は、令和7年(2025年)5月30日付の報道発表で、株式会社湘南西武ホーム(サービス名:爆サイ.com)を大規模特定電気通信役務提供者に指定しました。

指定を受けた事業者には、次のような義務が課されます。

  • 権利を侵害されたとする者が、侵害情報を示して削除の申出を行うための方法を定め、公表すること
  • 誹謗中傷などの権利侵害への対処に十分な知識経験をもつ「侵害情報調査専門員」を選任し、原則として申出を受けた日から7日以内に、削除等の措置を行うか否かを判断すること
  • 削除対象の基準を策定・公表し、削除対応の実績や運用状況を定期的に公表すること

これが意味するのは、「投稿者を特定する(開示請求)」の前に、「投稿を消す(削除申出)」という入口が、以前より制度的に整理されたということです。

「誰が書いたか突き止めたい」と「今すぐ人目に触れさせたくない」は、本来別の目的です。後者が優先であれば、まず削除申出の窓口を検討する道があります。

難易度を下げるために、今日できる3つのこと

1. まず証拠を保全する(URLごと)

証拠を残す前に投稿が削除されてしまうと、権利侵害の明白性が立証できず、開示請求は困難になります。誹謗中傷の投稿を見つけたときは、すぐにスクリーンショットやプリントアウト、PDF化等により保全してください。特にURLの証拠化が重要で、URLが切れずにすべて表示されているものを保存するようにしましょう。

投稿本文だけでなく、スレッドのURL・スレッド名・レス番号・投稿日時まで写っている形が理想です。同定可能性(壁④)を示すために、前後のレスも一緒に残しておくと役立つことがあります。

2. ログ保存を先に依頼する

開示請求を行う前に、投稿内容を保存したうえで、速やかに管理者へログ保存の申請を行うことが有効です。爆サイ.comにはログ照会依頼のフォームが開設されており、申請によるログの保存が可能とされています。

壁①(3〜6か月)に対する、最も直接的な打ち手がこれです。

3. 「事実」と「感想」を切り分け、反証資料を集める

投稿を1本ずつ読み、「これは事実を述べているか、感想か」を仕分けてください。事実だと読める部分については、それが真実でないことを示す客観資料を集めます。

  • 個人の場合:勤務記録、通院・診断の記録、当日の所在が分かるもの、やり取りの履歴 など
  • 店舗・会社の場合:勤怠記録、衛生管理記録、予約台帳、レジデータ、防犯カメラ記録 など

壁②③を越えられるかどうかは、怒りの強さではなく、この資料の厚みで決まっていきます。

まとめ

難しさの正体 今できること
ログ保存期間3〜6か月 発見当日に証拠保全+ログ保存申請
権利侵害の明白性が必要 事実/感想を仕分ける
「嘘である」立証責任が請求者側 客観的な反証資料を集める
同定可能性 特定できる記述と前後のレスをセットで保全
手続きが二段階で分かりにくい 削除と特定、どちらが目的かを先に決める

「開示請求は難しい」という言葉は、正しくは「準備の質と、動き出しの速さで結果が変わる手続きである」と読み替えるのが実態に近いと考えられます。そして、投稿の削除だけが目的であれば、2025年以降は削除申出という別の入口も整理されています。

まずは、今この瞬間に画面を保存すること。そこからです。

免責事項

本記事は、公開されている法令・行政資料・専門家による解説をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個別の投稿について権利侵害が認められるか、開示請求や削除申出が認められるかどうかは、投稿内容や事情によって判断が異なり、本記事が特定の結果を保証するものではありません。個別具体的な法律判断や法的手続については、弁護士にご相談ください。

なお、記事中の制度概要は執筆時点の情報に基づいています。爆サイ.comの各種窓口の運用や受付方法は変更される可能性があるため、実際にお手続きの際は各窓口の最新の案内をご確認ください。

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