「爆サイに自分の店や自分のことを書かれてしまった。実際に開示請求が通った事例はあるのだろうか」そう思って検索された方が多いのではないでしょうか。
インターネット上には「開示請求できます」という情報があふれていますが、実際には通る書き込みと、通らない書き込みがはっきり分かれます。この記事では、どんな事例で開示が認められ、どんな事例で認められにくいのかを、実際の裁判例の傾向とあわせて整理します。
先に結論:分かれ目は「具体性」「誰のことか」「スピード」

開示請求が認められるかどうかは、ざっくり言うと次の3点でほぼ決まります。
- その書き込みが、具体的な「事実」を示しているか(単なる感想や評価にとどまっていないか)
- 一般の読者が読んで「あなたのこと」だと分かるか(同定可能性)
- 証拠が残っていて、ログの保存期間内か
特に3つ目は見落とされがちです。IPアドレスなどの接続記録の保存期間は3か月〜6か月が目安とされており、プロバイダごとに異なるうえ、携帯電話会社はログの削除が早い傾向にあります。「もう少し様子を見よう」と迷っているうちに、手続きそのものができなくなってしまうケースは珍しくありません。
開示請求が認められやすい事例

①虚偽の事実を具体的に書かれたケース
「あの店は無許可で営業している」「客から金をだまし取った」といった、事実として真偽を判断できる内容で、それが嘘である場合です。社会的評価を下げることが明らかなため、権利侵害が認められやすい類型です。
②人格を否定する言葉で執拗に書かれたケース
具体的な事実が書かれていなくても、開示が認められた例があります。具体的な事実を示さずに「ペテン師」といった言葉のみを掲示板に書かれた事案で、裁判所は社会的評価の低下(名誉毀損)は認めなかったものの、名誉感情の侵害を理由に発信者情報開示請求を認めた判決があります(東京地裁 平成27年6月16日)。 Progre-law
つまり、「名誉毀損としてはグレーでも、侮辱(名誉感情侵害)として拾える」場合があるということです。
③源氏名やニックネームで書かれたケース
爆サイは接客業に関するスレッドが多く、本名ではなく源氏名で中傷されるケースが目立ちます。この場合、「その投稿が本当にあなたのことか」という同定可能性が争点になります。
実際に、爆サイで複数の中傷投稿をされた依頼者が発信者情報の開示を受けた事例では、この同定可能性が争点となりましたが、投稿内容が依頼者を指し示すものであり、一般の読者の通常の読み方を基準としても認識可能であるとして、同定可能性が認められています。 Nagaoka-law
爆サイはスレッドが地域別に分かれているため、被害者にとってはダメージが大きい反面、開示請求の場面では同定可能性が肯定されやすいという指摘もあります。 CYBERARTS LAWOFFICE
開示請求が認められにくい事例

①具体性のない悪口・評価にとどまるケース
読んでいてつらい書き込みでも、法的には「意見や感想」と扱われてしまうことがあります。
工務店を運営する原告について、掲示板に「絶対やめたほうがいい」「会社の方針がおかしい」「施主に対して上から目線」といった趣旨の書き込みがなされた事案では、具体的な事実の摘示がなく社会的評価も低下させていないとして、名誉権侵害が認められず、発信者情報開示請求が棄却されました(東京地裁 平成30年11月22日)。 ITbengo-Pro
「ムカつく」「二度と行かない」といった感想レベルの投稿は、この類型に近くなります。
②誰のことか読み取れないケース
同定可能性がなければ、名誉権侵害やプライバシー侵害は成立せず、削除請求も開示請求も難しいと考えられています。業種や地域しか書かれていない投稿は、ここでつまずきやすいところです。 Kandato
③証拠を残す前に投稿が消えてしまったケース
権利侵害の明白性を立証するには具体的な書き込みそのものが重要な証拠になるため、証拠を残す前に投稿が削除されてしまうと、立証が難しくなり開示請求は困難になります。 J-Jurist
見つけたらまずスクリーンショットです。ねつ造を疑われないよう、URL全体が分かる形で保存しておくことが大切です。 Bennavi
爆サイの開示請求はどう進むのか

大まかな流れは次のとおりです。
1. 証拠保全
投稿URL・スレッド名・レス番号・投稿日時が分かる形で保存します。
2. 爆サイへの請求
爆サイ運営は2025年9月18日付で手続き方法を改定し、現在はサイト内の「弁護士・法務関連の申請窓口」を経由したオンライン申請に一本化されています。フォームの入力には本人確認または代理人確認が必要で、証拠資料を添付して送信し、メール認証を経て、対応結果がマイページに通知される流れです。ただし爆サイ側が開示に応じるかどうかは任意であり、応じてもらえない場合もあります。 WakailawBakusai
3. 裁判所の手続き
任意で開示されない場合は、裁判所の手続きに進みます。2022年10月1日施行の改正法により「発信者情報開示命令」が新設され、サイト管理者側と経由プロバイダ双方への請求を、まとめて行えるようになりました。この制度は、2022年10月1日より前になされた投稿にも適用されるとされています。 HarutaKandato
なお根拠法は、2024年5月17日公布の「情報流通プラットフォーム対処法」が2025年4月1日に施行され、従来のプロバイダ責任制限法から名称・内容が改められています。 Kitahama
費用と期間の目安

| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 期間(特定まで) | おおむね6か月前後 |
| 弁護士費用 | 数十万円〜 |
サイト管理者からIPアドレスの開示を受けるまでに1〜3か月、そこから契約者の氏名・住所の開示まで3〜6か月程度が目安とされ、着手から特定までおよそ6か月はかかる見込みとされています。新制度でも少なくとも3か月はかかるといわれます。 Nagaoka-law
費用は事務所によって幅があり、一般には20万〜50万円程度とする解説もあれば、数十万円から100万円程度が相場とする解説もあります。実際の金額は必ず個別に見積もりを確認してください。 AsiroAtomfirm
ここで注意したいのが、費用を受け取って削除や開示請求を代行する無資格業者の存在です。報酬を受け取って削除を代行する無資格業者への依頼は、弁護士法第72条が禁じる非弁行為にあたる可能性があり、爆サイ自身も削除依頼は当事者本人または本人から正式に依頼を受けた弁護士からのみ受け付ける方針を示しています。 Fuhyo-bengoshicafe
特定できたあとにできること

投稿者が特定できれば、損害賠償請求や刑事告訴を検討できます。ただし期限があります。
慰謝料額は事案によって大きく変わりますが、名誉毀損の場合、個人で10万〜50万円程度、法人で50万〜100万円程度が相場とされるという整理があります。事業者であれば、風評被害による売上減少などの財産的損害を立証できれば慰謝料とは別に請求できる場合もあります。 AtomfirmWakailaw
よくある質問

Q. 削除だけしたい場合も開示請求は必要ですか
いいえ。削除と開示は別の手続きです。削除依頼は、削除したい投稿があるスレッド最下部の[削除依頼]ボタンから行う形になっており、メール・電話・郵送では受け付けられていません。ただし、削除を先にすると証拠が消えるため、特定も考えているなら順番に注意が必要です。 Fuhyo-bengoshicafe
Q. 開示請求したことは相手にバレますか
プロバイダは開示に先立って発信者に意見照会を行うのが通常のため、手続きが進めば投稿者側は請求があったことを知ることになります。
まとめ
爆サイの開示請求は、「ひどい書き込みかどうか」ではなく、具体的な事実が書かれているか・誰のことか分かるか・証拠とログが残っているかで結果が分かれます。認められた事例も、認められなかった事例も、この3点で説明がつくものがほとんどです。
そして共通しているのは、時間との勝負だということ。書き込みを見つけたら、まず証拠を保存してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的判断や結果を保証するものではありません。実際の対応にあたっては弁護士にご相談ください。


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